代表取締役のご挨拶
冬は原木しいたけ栽培第一歩、始まりの季節。
今年も『原木』がやって来ました。
これから菌を植えます。
この時期を迎えるにあたり、今年はこれまでとは違う複雑な気持ちでいます。
このトラックは長野県からやって来ました。
長野県産の原木です。
その後は順次長野県と地元岐阜県から原木が入ってきます。
長野県で放射線量の検査結果が『未検出』の山の原木を仕入れていますし、昨年仕入れた原木から生やした私たちの原木しいたけ自体も、暫定基準値を上回るような数値などみじんもなく、ひとまずはホッとしています。
ただ、今年は東北地方から1本も原木が入ることはありません。
それもそのはず。
昨年原発事故が起き、大量の放射性物質が無差別に撒き散らされたからです。
私たちだけではなく、全国の原木しいたけ生産者は皆この事態にあ然とし、パニックとなりました。
その理由東北地方が原木の大産地だったからです。
あの原発事故以来、日本の自然や森を守る原木しいたけ栽培つまり、『循環型農業のサイクル』は、完全に狂ってしまいました。
定期的に人が山に入り、手入れをしてこそ初めて森は守られます。
当然のことながらまずは近隣住民の身近な生活に直接関わることが最優先され、山どころではないのが現状です。
あくまでも東北地方全域の話ではありませんが、放射線量が高い場所があることは事実で皆さんもご存知の通りです。
私たちは苦しみ、悩みました。
東北全ての地域ではない。
風向きなどほんの少しのことで、辺りの放射線量は全く違ってくる。
しかし絶対という確信はないし、私たちのような個々の農家が膨大な費用をかけて1本ずつ放射線量を計測するなんてことには限界がある。
でも、これまでの間ずっと私たちのために東北地方から原木を運んで来てくれたトラックの運転手さんの顔も思い出す。
彼等は何も悪くないのに…。
最優先させるべきは何と言っても食べる人の安全。
結論『東北地方からの原木は入れない。』と決断せざるを得ませんでした。
当然です。
それは分かっています。
しかしこれまでずっと『人と人』として関わり築いてきた関係や繋がりのことを考えると、実に心が痛みました。
とある東北地方の原木しいたけ生産者は今でも生産を続けています。
食べるためではありません。
『損害賠償のためのデータ収集』のためです。
『計っては捨てる』の繰り返し。
「森を守ろう!」
「いいものを作って喜んでもらおう!」
もうそんなかつての『原木しいたけ職人』の魂を持った目ではありません。
なんとも無念です。
原発事故の責任は、当然日本政府や東京電力にはあると思います。
しかし、その電力を毎日当たり前のように利用しているのは、『私たち自身』であることを決して忘れてはなりません。
結局この事態は、『人類が自身で選択してきた道』なのです。
より快適な生活、より便利な生活を追求してきた『つけ』がこうして回ってきたのではないでしょうか?
私たち人類は、地球上に生きる全ての動、植物の生態系のバランスを無視し、技術の発展と共に本来自然界には存在し得ない物質までをも作り出してきた。
これでは自然との『共生』、『共存』とはとても言い難いでしょう。
第一次産業すなわち、『衣、食、住』。
着ること、食べること、住むこと。
この3つがいかに幸せなことか。
そして今、『食』自体が脅かされています。
実際に被災された方々は大切な家族や友人、そして住む家までも奪われてしまいました。
心よりお悔やみ申し上げます。
しかし、だからこそ『当たり前のことが何より幸せ』だと痛感されたのだと思います。
私たち原木しいたけ職人も、畑となる東北地方の原木を失い、これまでの『当たり前』を失ってしまいました。
増加する世界人口。
人類の『食糧危機』は目前。
餓死するわけにはいかないのでなりふり構わず『大量生産』、そしていずれはTPP。
きっとそうなるでしょう。
こうなるとテーブルの上はもう食材ではなく、『人工食』です。
いちばん大切なことが失われます。
そこに『心』がないからです。
私たち人間は土を耕し種をまき、収穫の喜びを肌で感じ、そしてその命をいただくことに感謝する。
これが生きるために食する基本です。
しかし殆どの人に自給自足は不可能だから、私たちは『心のある食材を届けたい!』と原木しいたけと向き合い、日々努力してきたのです。
次の世代に何が大切かを伝え、残してあげられるのか。
今こそ考え直す時です。
私たちしいたけブラザーズは、決して諦めません。
『使命感』に燃えています!
皆さん、原点に戻り、本当にあるべき未来を一緒に考ましょう。
平成24年吉日
有限会社 しいたけブラザーズ
代表取締役 横田 千洋
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